大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)2865号 判決

当裁判所は民法第六二一条は土地の賃借人が破産した場合にも適用があり、しかして土地の賃貸人が同条によって賃貸借契約の解約の申入をするについては正当事由の存在を必要とせず、たゞ賃借人(破産管財人)は地上に所有している建物の買取請求権を有するものと解するものであって、その理由は次に附加訂正するほか、原判決理由(原判決三枚目裏一〇行目から五枚目表一〇行目まで)において説示するところと同一であるからこれを引用する。

(1) 賃借人の破産によって賃貸人のこうむる不利益が賃料債権の確保が危ぶまれるという点にあるということは控訴人の主張するとおりであるけれども、破産法上賃料債権が財団債権として保護されるのは、破産宣告により賃貸借契約の解約の申入があった場合においてその終了にいたるまでに生じたものだけであって(同法第四七条第八号参照)、その解約の申入をすることなく賃貸借を継続する場合に破産宣告後の賃料債権が財団債権として保護されるべきことについては成法上の根拠を缺き、むしろ前記法条の反対解釈及び破産が一般的清算を本旨とするところからすれば、むしろこれを否定すべきものである。また賃料の不払があった場合には賃貸人は賃借人の債務不履行を原因として賃貸借契約を解除することができるが、その時にはもはや未払賃料の支払を受けることは困難であると考えられ、従ってその時では遅すぎるのである。むしろ民法第六二一条が賃借人破産の場合に賃貸借契約の解約の申入ができるとしたのは、そのような事態の生ずることを避けんがためであると考えられる。また昭和四一年の借地法の改正によって裁判所の許可があれば賃貸人の承諾がなくても土地賃借権の譲渡等ができる途が拓かれたが、これは従来賃貸人が正当の理由もないのにその承諾を拒否し、あるいは承諾するにしても不当に多額の承諾料の支払を要求するといったことが多く、またかかる事情のため賃貸人の承諾のえられないまま賃借権の譲渡等が強行され、その結果賃貸人の賃貸借契約の解除によって建物収去土地明渡の訴訟が提起される事例も多かったことにかんがみ、賃借人が地上建物を第三者に譲渡せんとする場合において第三者に賃借権の取得等を認めても賃貸人に不利となるおそれがない場合に賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可によって賃借権の譲渡等ができることとしてその譲渡等の円滑化、合理化をはからんとしたものであって、この点において同法の他の改正規定と相まってある程度借地権に譲渡性が付与せられ、また借地上の建物の担保価値が強化せられたことは事実であるが、それだからといって賃貸借契約が債権者債務者間の人的信頼関係を基盤とする点についてまで変更を加えたものということはできない。また右改正が行われたのは控訴人の主張するごとく土地の賃借権が社会的に価値のある存在であることを法制上無視できなくなったため法律上も価値のあるものとして把握すべきであると考えたがためであるとしても、前記改正にあたって民法の前記法条にはなんの変更も加えられなかったことからすれば、借地人破産の場合土地の賃貸借を解約すべきか、あるいは解約をせず、とくに右借地権の譲渡を承諾し、事宜によっては裁判所の関与のもとに相当な対価を取得すべきかを賃貸人の選択にまかせたものというべきである。

従って控訴人主張のごとき理由によってはまた土地の賃借人破産の場合には民法第六二一条の適用は排除されると解さなければならないということにはならない。さらに前記の如く破産による解約の場合、建物買収請求権の行使は妨げないと解されるから、破産債権者又は建物に抵当権等を有する別除権者は右買取代金によってその利益はある程度確保されることとなることも、右結論を助けるに足りる。

(浅沼 岡本 田畑)

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